宮城教育大学(仙台市青葉区)が今年度から実践的な救命方法を学ぶ講習を、東北6県の大学としては初めて必修化した。学校現場の最前線で、子どもたちの命を守れる人材の養成をめざす。今月までに教育学部に入学した1年生約380人が受講を始めている。
「意識、呼吸がないです!」「離れてください! 電流が流れます!」
1日、学内の体育館に集まった学生が患者に見立てた人形を前に、熱心に声を発した。今春から必修化した「普通救命講習Ⅰ」の一幕。10人程度のグループに分かれ、AEDの使い方や心肺蘇生法を消防職員から直接指導を受けた。
受講者の多くは教員志望。児童が水泳の授業で溺れた場面など、教員になった未来と重ねながら臨んだ。受講した太田愛真(あいま)さん(18)は「手順が決められているので、誰でも実践できそう。積極的に命を救う行動をとれるようにしたい」。
2011年3月の東日本大震災では、旧大川小学校(石巻市)で児童や教職員の計84人が犠牲になるなど、教育の場でも甚大な被害が出た。これ以降、各地の学校や大学などで安全教育の強化が進んだ。
宮教大も13年度、1年生の必修科目として環境問題と災害についての座学が中心となる「環境・防災教育」を開設。22年度からは、被災地を訪れて、防災や安全教育について考えてもらう授業も始めた。今年度にはこれまで選択制だった救命の実技講習を必修化したという。
宮教大には防災教育の修学を証明する独自のマイスター制度もある。講習の受講は、認定取得にもつながる。震災を経験した地で、子どもの命を守れる教員を送り出す素地を整えるのが狙いだ。
宮教大の防災教育研修機構長も務める佐々木利佳子理事(61)は「新人教師でも、現場に出たら等しく大人として子どもたちに見られる。有事に冷静に対応できる人材であってほしい」と話す。
今後も市消防局と連携し、学校現場で命を守れる教員を養成する考えだ。4年間かけて全ての学生が救命スキルを身に付けている状態をめざす。
市消防局も、宮教大の教育現場の視点を参考に、新たな指導マニュアルを作り始めた。消防職員が立ち会わなくても救命講習ができる資格を持つ人に向けた内容で、年度内には完成予定だ。
高橋宣明・市消防局救急指導課長(53)は「この講習が目の前の人を助ける手助けになってほしい」と話している。